悪女は果てない愛に抱かれる

そんなわたしを試すように、また唇が落ちてきた。


やさしい口づけに心臓がいとも簡単に反応する。

やさしいわりにあっさり離れていく唇に一抹の寂しさ覚えて、わたしは「終わった」と思った。



「………なんで」


しばらくして、ようやくひとこと目が出た。



「なんでって」

「キス……二回も、した」


「……何も言わねえからいいのかと思った」

「っ、そ……」


そんな。

横暴だ。あまりにも横暴。


そしてずるい。

一度目がついうっかり、という衝動的なものであればこちらも事故として処理できるのに。

二度目で、しっかりわたしを求めたことを明白にしてくるなんて。




甘く誘う視線に意識がまるごともっていかれる。
抗えなくてくらくらする。

信じたくないけれど、今わたしだけを見つめる瞳に強く惹かれている。



彼の指先がわたしの頬に触れて。


「熱、まだ下がってないだろ」


そんな声とともに、ゆっくりと体重がかかった。

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