悪女は果てない愛に抱かれる
「あのさあ、オレ今この可愛い子と喋ってんの。お前みたいなブスに構ってる暇はないの、ごめんねえ?」
しまった。
話し合いが成立しないタイプの人だった。
うう、どうしたものか……。
「えっと……じゃあ、その子から手を離さないなら通報します」
とりあえずスクバからスマホを取り出して見せつけてみた。
大抵の場合、これで退散してくれると思うのだけど……。
今回は少し、計算違いだったみたい。
「はあ……? ガキが正義の味方気取ってんじゃねえよ!」
ヤバヤバである。相手を怯ませるどころか、憤慨させてしまった。
わたしに向かって拳が勢いよく振り下ろされてきたので、さすがに避けさせてもらう。
案の定、わたしに命中しなかったことで相手の怒りメーターはさらに急上昇。
わかりやすくも、首から上が順々に赤くなっていっている。
そして、怒りに震えた拳が、またも懲りずにわたしに突撃してきた。