悪女は果てない愛に抱かれる

絡んだ指先を、ぎゅっと握り返しながら名前を呼んでしまった。


もうだめ、の意味のつもりだった。


観月くん以外のこと何も考えられなくて、どきどきしすぎて息も苦しくて。

このまま溺れしんでしまいそうで、怖かったから……。


……だけど。



「やば……。もっかい名前呼んで」


色めきだった瞳と、甘く掠れた声にあてられて──ドクリ。

再び落ちてくる唇に、あっさり支配を許してしまう。



「や……だめ───んぅ」

「声まで甘い」

「〜っ、ぅ、……」

「ほら呼んで、もっかい。早く」


唇に触れる寸前で止められて、焦らされる。


やめてもらおうと思って名前を呼んだんだから。
このまま触れてくれないのが、一番いいはずなのに。


あれだけ甘いものを与えておいて、今さらお預けなんてひどい……とも、思って。


ぐちゃぐちゃになった感情が、よりいっそう理性を鈍らせるから。
< 81 / 197 >

この作品をシェア

pagetop