悪女は果てない愛に抱かれる
絡んだ指先を、ぎゅっと握り返しながら名前を呼んでしまった。
もうだめ、の意味のつもりだった。
観月くん以外のこと何も考えられなくて、どきどきしすぎて息も苦しくて。
このまま溺れしんでしまいそうで、怖かったから……。
……だけど。
「やば……。もっかい名前呼んで」
色めきだった瞳と、甘く掠れた声にあてられて──ドクリ。
再び落ちてくる唇に、あっさり支配を許してしまう。
「や……だめ───んぅ」
「声まで甘い」
「〜っ、ぅ、……」
「ほら呼んで、もっかい。早く」
唇に触れる寸前で止められて、焦らされる。
やめてもらおうと思って名前を呼んだんだから。
このまま触れてくれないのが、一番いいはずなのに。
あれだけ甘いものを与えておいて、今さらお預けなんてひどい……とも、思って。
ぐちゃぐちゃになった感情が、よりいっそう理性を鈍らせるから。