悪女は果てない愛に抱かれる

観月くんが画面を見たのを確認してから『拒否』ボタンをタップした。

指先が震えていることに気付かれませように、と祈りながら。



「切らなくてもいいだろ」

「い、いや……いつも大した用じゃないので……あ〜、でも、わたしもそろそろ帰──ひゃっ!?」



上体を起こした瞬間、ぐいっと腕を引かれ。

すると今度は、わたしが観月くんに覆いかぶさるような体勢になった。



「な、っ……ごめんなさいっ、いや……えっ?」



視界がぐるぐる回る。

冷静でいたつもりだけど、全くもってだめだめ。

見つめられながら距離が近づくと、キャパがとうとう限界を迎えて。



「も、もう無理だよ、わたし……初めて、で……っ、これ以上、わかんないの……っ」



目の前の胸板を、無鉄砲にどん!と押した。

直後、やってしまったと我にかえる。

< 84 / 197 >

この作品をシェア

pagetop