悪女は果てない愛に抱かれる

「………」

「………」


「………肋骨折る気?」

「っえ……う、うあ、ごめんなさい! ごめんなさい!!」


「さっきはあんなに大人しくて可愛かったのにな」

「〜っ、わ、忘れてください……っ」


必死に懇願する。

“こんなはずじゃなかった”。
それは、観月くんも同じはずだから。


「わたしも忘れるからっ、お願──んんっ」



襟元を乱暴に掴まれ、唇が押し付けられる。


「……な、なんで……っ」


ぐわぐわと、また熱の上がる気配がする。


どきどきしてくらくらして、このままじゃ倒れてしまう。


まっすぐ射抜いてくる視線から逃れるように、体ごと背を向けてソファを下りた。



「色々とご迷惑をおかけしてごめんなさいっ、……き、昨日言われた通り、もう二度とここには来ないので……っ、失礼します……!」



頭に並べたセリフを早口でなぞって、同じくらい早足で部屋を出た。



それでも、唇にはずっと熱が残ったまま──。

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