悪女は果てない愛に抱かれる
完全に八つ当たりだ。
心配してくれているのに、今日の出来事を探られたくない一心でつい跳ね除けてしまう。
「毎日毎日、安哉くんの言うこときくのもう疲れたんだもん……、こうやってしつこく尋ねられたりとか、もうウンザリ……」
「……は」
「もう干渉しないで。ぜんぜん楽しくない、せっかく安哉くんと違う高校行ったのに」
止まんなきゃ、って、そう思うのに。
次から次へとこぼれてきて止まらなかった。
沈黙が訪れて、やりすぎた……と泣きそうになる。
こんなことを言いたかったわけじゃない。
安哉くんの下僕でいるのは大変だし、もう辞めたいと思っているのは本当だけど。
わたしの安哉くんへの気持ちは、それだけじゃないから。
血の繋がった唯一の兄妹。
お母さんはわたしより恋人を選んだのに。
お父さんはわたしを道具としか見ていないのに。
安哉くんだけは、いつも寄り添ってくれていた。
安哉くんの横暴な命令も、その半分は口実で、実はわたしをそばで守ろうとしてくれているからなのも気づいている。