悪女は果てない愛に抱かれる
遠のいたかと思えば、そのあとに続けて何台ものパトカーが家の近くを通り過ぎていく。
その中には救急車のサイレンも混じっていた。
「いや……まさか……違うよね」
スマホを握りしめた指先がしだいに冷たくなっていく。
安哉くん……。
さっきまで渋っていたのが嘘のように、躊躇いなくその名前をタップした。
……だけど。
『おかけになった電話は、現在電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないためお繋ぎすることができません……───』
それを淡々と知らせる音声に、血液がさあっと引いていくのがわかった。
……電源を切ってるだけだよね。
映画館にいるのかもしれない。安哉くん、映画好きだし、案外そういうところしっかりしてるし。
「……っ」
いてもたってもいられなくなって、テレビをつける。
どのチャンネルにしても、それらしきニュースは流れてこない。