二週間の偽装彼氏~義兄の兄に溺愛されています~
帰りの車内で
暗い夜の中を、颯士の車は静かに走っていく。
助手席に乗った美璃は、見るともなしに、窓の外を眺めていた。
颯士の車は黒の海外製だ。
やや大型の車種で、もちろん左側にハンドルがある。
海外製の車など、美璃はほかに乗ったことなどない。
だから初めて乗せてもらったときは目を白黒させてしまった。
こんな高級そうな車を持っているなんて、と疑問にも思った。
颯士は「好みで選んだだけだよ」と言っていたけれど。
でも今ではもう、この車にもだいぶ慣れた。
それに呑気にはしゃげる気分でもない。
外は真っ暗な中に、夜遅くまで灯る都内の明かりが綺麗だった。
美璃が一人暮らしをするマンションまで、美香の家からは、車なら三十分ほどかかる。
あまり近くはないのだ。
だから颯士に送らせてしまう形になって、悪かったかな、と思うけれど、義理の兄妹だから甘えてもいいかな、とも思った。
「美璃ちゃん、少しだけ事情は聞いたけど……なんとかなりそう?」
運転席から颯士が聞いてきて、美璃は窓の外から運転席へ、視線を移した。
そしてどきっとしてしまう。
運転中だから颯士はもちろん前をしっかり見ていたけれど、端正な顔に浮かぶ表情は、明らかに美璃を心配してくれていた。
それに、この寄り添うような優しい言葉。
美璃の鼻の奥が、再びツンとしてしまう。
でもなんとか堪えて、答える。
「わからないです……。お姉ちゃんにも話したけど、直属の上司に言われちゃったし、もう会議にかかってるって言うし……」
夜景だけが輝く暗闇の中で、美璃はぽつぽつと話していった。
颯士は黙って、たまに小さく頷きながら聞いてくれる。
助手席に乗った美璃は、見るともなしに、窓の外を眺めていた。
颯士の車は黒の海外製だ。
やや大型の車種で、もちろん左側にハンドルがある。
海外製の車など、美璃はほかに乗ったことなどない。
だから初めて乗せてもらったときは目を白黒させてしまった。
こんな高級そうな車を持っているなんて、と疑問にも思った。
颯士は「好みで選んだだけだよ」と言っていたけれど。
でも今ではもう、この車にもだいぶ慣れた。
それに呑気にはしゃげる気分でもない。
外は真っ暗な中に、夜遅くまで灯る都内の明かりが綺麗だった。
美璃が一人暮らしをするマンションまで、美香の家からは、車なら三十分ほどかかる。
あまり近くはないのだ。
だから颯士に送らせてしまう形になって、悪かったかな、と思うけれど、義理の兄妹だから甘えてもいいかな、とも思った。
「美璃ちゃん、少しだけ事情は聞いたけど……なんとかなりそう?」
運転席から颯士が聞いてきて、美璃は窓の外から運転席へ、視線を移した。
そしてどきっとしてしまう。
運転中だから颯士はもちろん前をしっかり見ていたけれど、端正な顔に浮かぶ表情は、明らかに美璃を心配してくれていた。
それに、この寄り添うような優しい言葉。
美璃の鼻の奥が、再びツンとしてしまう。
でもなんとか堪えて、答える。
「わからないです……。お姉ちゃんにも話したけど、直属の上司に言われちゃったし、もう会議にかかってるって言うし……」
夜景だけが輝く暗闇の中で、美璃はぽつぽつと話していった。
颯士は黙って、たまに小さく頷きながら聞いてくれる。