二週間後の偽装彼氏~義兄の兄に溺愛?されています~
「それに彼氏、あ、元……カレと別れたのは……変わらない……し……」

 もうひとつの理由を口に出した。

 しかしその途端、喉の奥から、ぐっと熱いものが込み上げる。

 現実を口に出して説明したことで、もう落ち着けたはずの苦しい気持ちは簡単に復活した。

 じわっと目元に熱いものが滲む。

「す、すみません。大義兄さんにこんな話……」

 慌てて目元を拭う。

 そこでやっと、夕方から散々泣いたことで、メイクも崩れていたのだと気付いて、また気まずくなった。

「いや。……良かったら、少しドライブしてかない?」

 颯士は軽く否定した。

 次に続いたのは、慰めの言葉ではなく、提案。

 美璃は目をぱちくりさせてしまった。

 てっきり「大丈夫だよ」とか「なんとかなるさ」とか言われると思っていたのだ。

 それが、まったく違う提案を。

 不思議に思った美璃に、颯士が視線を向けてきた。

 気付ければ信号でちょうど停止していたところだ。

「少しは気がまぎれるかもしれないよ」

 夜景のわずかな明かりに照らされた顔は、とても優しく、綺麗だった。

 美璃を数秒、ぽうっと見とれさせてしまう魅力を持っている。
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