二週間後の偽装彼氏~義兄の兄に溺愛?されています~

高級ブティックとパーティードレス

「ああ、美璃ちゃん。お疲れ様」

 会社の前だと悪いかと思ったので、少し離れた駅前で待ち合わせた。

 美璃が車に近付いていくと、運転席の窓が開いて、颯士が顔を出す。

 微笑でねぎらってくれた。

「お迎えに来てくれるなんて、ありがとうございます。わざわざすみません」

 乗降のために停めているだけだったので、美璃は急いで乗り込んだ。

 昨日も乗った助手席に収まり、シートベルトを引っ張り、お礼を言う。

「いい? 出るよ」

 美璃がシートベルトをしっかりかけたのを確認して、颯士が言った。

 そのまま車は街中へ向かって走り出す。

「颯士さん、お仕事上がりが早いんですね」

 何気ない会話が始まった。

 自分の気持ちが昨日よりずっと落ち着いているのを、美璃は自覚する。

 美璃のそれに、颯士はさらりと返答した。

「ああ。今日は早上がりできたんだ。結構、時間に融通は利くから」

「そうなんですか」

 確かに、会社勤めであるとはいえ、役員なら、一般社員とは違うだろう。

 本当にすごいひとだなぁ、と改めて感じながら、美璃はシンプルに相づちを打った。

「夕食前に、ちょっと買い物に行きたいと思うんだけど、どうかな?」

 車はどこへ向かっているのか、街中をそのまま突っ切っていく。

 走りながら、颯士が提案した。

「お買い物ですか。私は構わないですけど……」

 なにを買うのかわからなかったけれど、時間はあるし、構わない。

 美璃はそのまま答えた。

 颯士は横顔で少し微笑み、「ありがとう」と答える。

 しかし軽い気持ちで受け入れてしまったことを、美璃は数十分後に後悔することになった。
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