二週間後の偽装彼氏~義兄の兄に溺愛?されています~
 静かに颯士がなにか切り出した。

 美璃は不思議に思う。

 そっと顔を上げ、颯士を見上げた。

 颯士と視線が合う。

 謝らないと、なんて言った通り、颯士はちょっとすまなさそうに眉が寄っている表情をしていた。

「今日、会場に来るのを『偽装彼氏』なんて形にしたことだ」

 その顔で、静かに言う。

 美璃は目をまたたいてしまった。

 それを謝られる理由がわからない、と思う。

「それは……私を助けてくれるため、だったんでしょ?」

 だからそのまま聞いてみる。

 美璃のそれに、颯士は表情を変えた。

 すまなさそうな表情の中に、苦笑いのようなものが混ざる。

「そうだけど、それだけじゃないんだ。……美璃に初めて会ったのは、美香さんと颯太のご挨拶だったな」

 肯定と否定が合わさった言葉のあと、不意に違うところへ話が行った。

 美璃は首をかしげてしまう。

 この流れがまったくわからない、と不思議に思う気持ちしかない。
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