邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
 牢に入れられ、はげしい拷問を受けている、とだけ、ミリエルは看守に聞いた。
「ユアン……」
 ミリエルのせいだ。ミリエルと恋人になったのが、いけなかったのだろうか。
 ……いいや、きっと、ユアンはミリエルが彼の恋人でなくともかばってくれただろう。けれど一介の騎士では聖女という権力に勝てない。
 英雄から一転して逆賊とされたユアンの輝かしい未来を奪ったのは、間違いなくミリエルという存在だった。
「気分はどう? お姉様」
「セレナ……」
 うなだれるミリエルの耳に、硬い石ころを蹴る音と、甘い砂糖菓子のような声が届いた。
 銀色の神秘的な髪に青い目をした、ミリエルと同じ色彩の、けれどミリエルより甘やかな容姿の彼女こそ、ミリエルの双子の妹、セレナだ。似ていない双子のミリエルたちだったが、セレナはおそらくミリエルのことが嫌いなのだろう。
 セレナはことあるごとに何か悪いことをミリエルのせいにした。
 両親もそれに倣ってミリエルを虐げた。
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