邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
聖女としてセレナが選ばれたのは、セレナとミリエルが候補となったとき、両親が金を積んでセレナをごり押ししたからだ。
たしかに聖なる魔力を有しているセレナだが、その力がどれだけのものかは家族ですら知らない。修行をしているところすら、ミリエルは見たことがない。
それでも、この国の権力はセレナのものだ。王子や宰相、騎士団長と懇意にしているセレナに集中した権力は、人ひとりを殺めることも、救うことだってたやすい。
ミリエルはゆるゆると顔を上げた。かさついた唇を震わせる。縛られたまま、その場に膝をついてセレナに懇願した。
尊厳なんてなくていい。プライドなんて捨てられる。ユアンのためなら。
──ユアンが、生きていてくれるなら。
「私のことが嫌いなんでしょう? 私はどうなってもいいから、ちゃんと死ぬから、だから……ユアンだけは助けて……」
「──ああ、あの騎士? 死んだわよ、今朝」
「え……?」
ミリエルの言葉に、何でもないようにセレナが返す。当惑した声が、自分でも自覚できないまま、ミリエルの唇から漏れだした。
「あんたを救おうとでもしたのかしら、ミリーを助けないと国を滅ぼす、なんて言ったのが運の尽きね。揚げ足をとられて反逆罪確定、斬首刑よ」
すい、とセレナの手が彼女の首に当てられる。そのまま横に引かれた手は、ユアンの首を切るような動作に見えた。今聞いたことが信じられなくて呆然とするミリエルに、セレナが口角を上げる。
たしかに聖なる魔力を有しているセレナだが、その力がどれだけのものかは家族ですら知らない。修行をしているところすら、ミリエルは見たことがない。
それでも、この国の権力はセレナのものだ。王子や宰相、騎士団長と懇意にしているセレナに集中した権力は、人ひとりを殺めることも、救うことだってたやすい。
ミリエルはゆるゆると顔を上げた。かさついた唇を震わせる。縛られたまま、その場に膝をついてセレナに懇願した。
尊厳なんてなくていい。プライドなんて捨てられる。ユアンのためなら。
──ユアンが、生きていてくれるなら。
「私のことが嫌いなんでしょう? 私はどうなってもいいから、ちゃんと死ぬから、だから……ユアンだけは助けて……」
「──ああ、あの騎士? 死んだわよ、今朝」
「え……?」
ミリエルの言葉に、何でもないようにセレナが返す。当惑した声が、自分でも自覚できないまま、ミリエルの唇から漏れだした。
「あんたを救おうとでもしたのかしら、ミリーを助けないと国を滅ぼす、なんて言ったのが運の尽きね。揚げ足をとられて反逆罪確定、斬首刑よ」
すい、とセレナの手が彼女の首に当てられる。そのまま横に引かれた手は、ユアンの首を切るような動作に見えた。今聞いたことが信じられなくて呆然とするミリエルに、セレナが口角を上げる。