邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
「フフ、あはは! その顔、面白―い!」
腹を押さえ、けらけらと笑うセレナは、その白い法衣から感じられる神秘的な雰囲気とは真逆の気配を放っていた。
膝をついたまま目を見開くミリエルの顎をくい、とセレナが指先でもち上げる。ミリエルの目から流れ落ちる涙を見て、愉快そうに顔を歪める。
反射的に、ミリエルは縛られた手のまま、セレナにと飛びかかっていた。頭突きの形になって、けれどセレナは少したたらを踏む程度で、特に痛がる様子はなかった。
逆に、すぐに護衛に取り押さえられたミリエルが、河口近くの硬い岩に押し付けられて顎をしたたかに打った。痛みがミリエルの顎下から胸までを襲う。じわりと広がる熱い感覚は、鉄の匂いがした。どうやらどこかを切ったらしい。
でも、頭に血が上りすぎて、痛みをうまく拾えなかった。
「う、ぁ……ッ」
「あーあ、なにするのよ。転んだら法衣が汚れちゃうじゃない。これ、絹でできてるんだからね」
地面に散らばる長い銀髪が少しずつ赤く染まる。それを見降ろしたまま、セレナは言い聞かせるように言った。
腹を押さえ、けらけらと笑うセレナは、その白い法衣から感じられる神秘的な雰囲気とは真逆の気配を放っていた。
膝をついたまま目を見開くミリエルの顎をくい、とセレナが指先でもち上げる。ミリエルの目から流れ落ちる涙を見て、愉快そうに顔を歪める。
反射的に、ミリエルは縛られた手のまま、セレナにと飛びかかっていた。頭突きの形になって、けれどセレナは少したたらを踏む程度で、特に痛がる様子はなかった。
逆に、すぐに護衛に取り押さえられたミリエルが、河口近くの硬い岩に押し付けられて顎をしたたかに打った。痛みがミリエルの顎下から胸までを襲う。じわりと広がる熱い感覚は、鉄の匂いがした。どうやらどこかを切ったらしい。
でも、頭に血が上りすぎて、痛みをうまく拾えなかった。
「う、ぁ……ッ」
「あーあ、なにするのよ。転んだら法衣が汚れちゃうじゃない。これ、絹でできてるんだからね」
地面に散らばる長い銀髪が少しずつ赤く染まる。それを見降ろしたまま、セレナは言い聞かせるように言った。