邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
「いい? お姉様。あんたはもう、差し出すものも持ってないの。何もできないのよ」
視線だけが仰向く。セレナの顔は隠しきれない喜色に満ちていた。ミリエルは奥歯を噛む。噛みすぎてぎしぎしと音が鳴った。
「あんたのこと、嫌いか聞いたわね? 嫌いじゃないわ。どうでもいいんだもの」
「……どうでもいいなら、どうして放っておいてくれなかったの……」
絶望が染み渡った胸から、肺から、絞り出すように声を吐く。セレナは自分の整えられた銀髪をくるくると指に巻き付けながら言った。
「あんたには役割があるからよ。この世界の人間にはみんな『役割がある』」
「やく、わり……?」
「そう、お姉様。あんたは聖女の悪姉。妹に嫉妬して、聖女の座を奪おうとするの」
意味の分からない言葉だ。神にでもなったみたいに、運命を語るセレナに、背筋が冷たくなるのを感じる。
「嫉妬なんてしないわ」
「そう、あんたはそう思って、役割を全うしなかった。だからあの騎士も死んだのよ」
「──え……? いた……ッ」
視線だけが仰向く。セレナの顔は隠しきれない喜色に満ちていた。ミリエルは奥歯を噛む。噛みすぎてぎしぎしと音が鳴った。
「あんたのこと、嫌いか聞いたわね? 嫌いじゃないわ。どうでもいいんだもの」
「……どうでもいいなら、どうして放っておいてくれなかったの……」
絶望が染み渡った胸から、肺から、絞り出すように声を吐く。セレナは自分の整えられた銀髪をくるくると指に巻き付けながら言った。
「あんたには役割があるからよ。この世界の人間にはみんな『役割がある』」
「やく、わり……?」
「そう、お姉様。あんたは聖女の悪姉。妹に嫉妬して、聖女の座を奪おうとするの」
意味の分からない言葉だ。神にでもなったみたいに、運命を語るセレナに、背筋が冷たくなるのを感じる。
「嫉妬なんてしないわ」
「そう、あんたはそう思って、役割を全うしなかった。だからあの騎士も死んだのよ」
「──え……? いた……ッ」