邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
当たり前のように言われて、ミリエルの時が止まったようになる。ようやっと我に返ったとき、セレナの手がミリエルの前髪を掴んだ。ぶちぶちと何本か髪が抜ける。抜けた髪を見て、「汚い」と呟いたセレナは手に絡んだミリエルの髪を捨てた。
「だって、ここはそういう世界なんだもの。ああ、楽しみ、邪竜様は最後の攻略対象なのよね。足元まである長い黒髪に、血みたいな真っ赤な目! 実際に見るとどんなイケメンなのかしら!」
「こうりゃく……たいしょう……?」
楽し気にはしゃぐセレナが理解できない。そういう世界?どういうこと?ごちゃごちゃとした頭で、口にできた言葉はわずかだった。
「邪竜……? 神話の……?」
「そ。あんたが死ねば、人間の醜さに反応して邪竜様が現れる」
そんな話、聞いたこともない。ミリエルが芋虫のように這いつくばっているのを満足そうに見て、セレナが言葉を続けた。
「この世界に転生したなら、ハーレムルートからの女王エンドを目指したいじゃない? 聖女セレナが世界中の人々に愛されるエンディングよ、さいっこう!」
「……?」
セレナの言葉は相変わらず頭にうまく入ってこない。上滑りしていく情報たちに、同返して言いかわからなくなる。混乱してもはや言葉も出てこないミリエルに、セレナは飽いたようだった。
「……あーあ、盛り上がらないわね。かわいそうだから教えてあげる。この世界はね、日本、という異世界の国で作られた物語、乙女ゲーム『竜恋』の世界なの」
とん、とセレナの靴がミリエルの頭の横に漬けられる。軽く蹴られても、ミリエルにはもう抱ける情などなかった。
「だって、ここはそういう世界なんだもの。ああ、楽しみ、邪竜様は最後の攻略対象なのよね。足元まである長い黒髪に、血みたいな真っ赤な目! 実際に見るとどんなイケメンなのかしら!」
「こうりゃく……たいしょう……?」
楽し気にはしゃぐセレナが理解できない。そういう世界?どういうこと?ごちゃごちゃとした頭で、口にできた言葉はわずかだった。
「邪竜……? 神話の……?」
「そ。あんたが死ねば、人間の醜さに反応して邪竜様が現れる」
そんな話、聞いたこともない。ミリエルが芋虫のように這いつくばっているのを満足そうに見て、セレナが言葉を続けた。
「この世界に転生したなら、ハーレムルートからの女王エンドを目指したいじゃない? 聖女セレナが世界中の人々に愛されるエンディングよ、さいっこう!」
「……?」
セレナの言葉は相変わらず頭にうまく入ってこない。上滑りしていく情報たちに、同返して言いかわからなくなる。混乱してもはや言葉も出てこないミリエルに、セレナは飽いたようだった。
「……あーあ、盛り上がらないわね。かわいそうだから教えてあげる。この世界はね、日本、という異世界の国で作られた物語、乙女ゲーム『竜恋』の世界なの」
とん、とセレナの靴がミリエルの頭の横に漬けられる。軽く蹴られても、ミリエルにはもう抱ける情などなかった。