邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
「勝手に言いなさいな。これがこの世界の真実よ」
つん、と顎を上げるセレナを、ミリエルは睨んだ。もはや失うものがないなら、やけっぱちになって何でもできると思った。
「もし、本当に邪竜が復活するとして……それはあなたの醜さに呆れたからだわ」
その言葉に、セレナの表情がすっと消える。瞬間的に振り上げられた手のひらは、避けることなどできないミリエルの頬に吸い込まれた。
鉄の味が口の中に広がる。痛みはなかった。怒りすぎているからだろうか。
「──黙りなさい」
「黙らないわ、セレナ、あなたはそれが本当に愛される聖女の行いだと思うの?」
「私の世界よ、私のゲームを否定しないで!」
かっとセレナの目が見開かれる。
瞬間、ミリエルの体からかくん、と力が抜けた。否定の言葉を紡ごうとした唇は閉じ、どうやっても開けることができない。……というより、セレナの望むとおりにしなければ、という意識が働いてしまうのだ。
(これは……魅了魔法……?)
洗脳ではない、催眠でもない。体の感覚はあるし、意識ははっきりしている。
完全に動けないわけではない。ただ、セレナの願いを叶えたいと思うだけ。
けれど、そんな魅了魔法があるのだろうか。
つん、と顎を上げるセレナを、ミリエルは睨んだ。もはや失うものがないなら、やけっぱちになって何でもできると思った。
「もし、本当に邪竜が復活するとして……それはあなたの醜さに呆れたからだわ」
その言葉に、セレナの表情がすっと消える。瞬間的に振り上げられた手のひらは、避けることなどできないミリエルの頬に吸い込まれた。
鉄の味が口の中に広がる。痛みはなかった。怒りすぎているからだろうか。
「──黙りなさい」
「黙らないわ、セレナ、あなたはそれが本当に愛される聖女の行いだと思うの?」
「私の世界よ、私のゲームを否定しないで!」
かっとセレナの目が見開かれる。
瞬間、ミリエルの体からかくん、と力が抜けた。否定の言葉を紡ごうとした唇は閉じ、どうやっても開けることができない。……というより、セレナの望むとおりにしなければ、という意識が働いてしまうのだ。
(これは……魅了魔法……?)
洗脳ではない、催眠でもない。体の感覚はあるし、意識ははっきりしている。
完全に動けないわけではない。ただ、セレナの願いを叶えたいと思うだけ。
けれど、そんな魅了魔法があるのだろうか。