邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
 ──心が読めなかったとしても、ミリーの考えていることくらい分かるよ。僕はミリーを、君が思うよりずっと真剣に見ているんだから。
 それは、言外に心が読めると言っているようなものである。
 けれど、そう、そうか。
 ユアンが変わらずにミリエルのことを想ってくれているとわかって、ミリエルは嬉しくなった。
 そうしていると、気持ちに余裕が出てきて、周囲のざわめきに気が付く。
 ユアンに抱えられたミリエルを見て、儀式を行おうとしていた人々は驚いた顔をしていた。
「どうして邪竜はあの悪姉を食わないんだ?」
「聖女様の言葉の通りなら、邪竜はまずあの女を殺すはずだろう……?」
「それに、邪竜と会話をしているように見える。邪竜と話せるのは、聖女様だけのはずなのに……」
 そんな言葉が聞こえてきて、ミリエルはユアンを振り仰いだ。
「ユアン、あなたの声は、もしかして他の人には聞こえないの?」
 ──こうして直接話ができるのは、聖女だけだ。ほかの人間には、僕の声はただの唸り声に聞こえるはずだよ。
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