邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
 ミリエルは手を大きく伸ばした。ミリエルにだって聖なる魔力がある。ありったけの魔力を使えば、クッションくらいにはなれるはずだ。
 ミリエルは修行なんてほとんどしていない。セレナのはきだめであるミリエルには、そんな時間与えられなかった。だから、これでいいのかわからない。けれど、守る、というたったひとつの意志だけで放出した魔力は、ユアンとミリエル自身の前で大きな盾の形をとった。
 光の球と盾が正面からぶつかり、きいいん、と澄んだ音があたりに鳴り渡る。
 弾かれたのは、セレナの魔法の方だった。
 盾に触れた瞬間あっけなくはじけ、そのまま砂のようになって消えてしまったセレナの魔法の球は、そのままさらさらと空気に溶けて消えていく。
 ──あの程度が、ミリーに勝てるわけないだろう。
「え……?」
 ユアンの声を耳にしながら、ミリエルは呆然とそう口にした。そうしているのはセレナもだった。
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