邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
 王太子をはじめとする国の要人にまで魅了をかけていたのか、とミリエルは口元を押さえた。そんなことをして、国が崩壊したらどうするのだ。
 いや、そもそも、先ほどセレナは女王になると言っていた。まさか、そんなことを考えて誰しもを魅了していたというのだろうか。恐れを知らない所業にもほどがある。
 火山の頂上、儀式のために集った人々が作った狭い安全地帯はざわついている。けれど、その中で悲鳴じみた王太子の声はよく響いた。
「神竜様は浄化された! 邪竜だったのは過去の話だ! 今は火山の中で眠りにつき、聖女の生まれる地の守り神となっている……! これは教会の上層部ならだれでも知っている話だ。君は聖女のくせにそんなことも知らないのか!?」
「え……?」
「邪竜ではない。聖女の生まれるこの国から災いを払う神竜様は、破邪竜なのだと、君は教わったはずだ!」
「し、しらな、知らない……!」
「知らないでは済まされない! 破邪竜様に攻撃をする、ということは、この国を滅ぼしかねない大逆罪だ!」
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