邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
だから、すぐに「ごめんなさい」と言って、撤回する予定だった。
『ごめんなさい、冗談よ。困らせる気はなかったの』
そう言って、この恋を墓に埋めてしまうつもりだった。けれど、それを阻止したのはほかでもない、ユアンその人だった。
「僕から言おうと思っていたのに、先を越されてしまった」
「え……?」
ユアンの目がゆるりと細まる。普段はこの世のすべてに怒っているとでもいうようにきつく吊り上げられているそれは、今はミリエルただ一人を一心に見つめて柔らかく瞬いている。
そう、まるで、ミリエルが愛しくてならない、とでもいうように。
「じょうだ」
「冗談、なんて言わせない。僕は君の告白を本当のものだと知っている」
戸惑うミリエルの髪を救い取り、ユアンがその先に口付ける。
二人の吐息が混ざるような距離の中、ユアンが美しいテノールで囁くように言った。
「僕も、君を愛している」
「……え?」
ミリエルの唇は震えた。きっと声もそうだっただろう。
何もかも自分のものではなかった。そんなミリエルが一番大切だと思った存在を急に「贈り物だよ」とぽんと渡されたって、信じることができない。
これは夢かもしれない、と本気で思った。あるいは、これはミリエルの幸福な願望なのだと。
『ごめんなさい、冗談よ。困らせる気はなかったの』
そう言って、この恋を墓に埋めてしまうつもりだった。けれど、それを阻止したのはほかでもない、ユアンその人だった。
「僕から言おうと思っていたのに、先を越されてしまった」
「え……?」
ユアンの目がゆるりと細まる。普段はこの世のすべてに怒っているとでもいうようにきつく吊り上げられているそれは、今はミリエルただ一人を一心に見つめて柔らかく瞬いている。
そう、まるで、ミリエルが愛しくてならない、とでもいうように。
「じょうだ」
「冗談、なんて言わせない。僕は君の告白を本当のものだと知っている」
戸惑うミリエルの髪を救い取り、ユアンがその先に口付ける。
二人の吐息が混ざるような距離の中、ユアンが美しいテノールで囁くように言った。
「僕も、君を愛している」
「……え?」
ミリエルの唇は震えた。きっと声もそうだっただろう。
何もかも自分のものではなかった。そんなミリエルが一番大切だと思った存在を急に「贈り物だよ」とぽんと渡されたって、信じることができない。
これは夢かもしれない、と本気で思った。あるいは、これはミリエルの幸福な願望なのだと。