邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
 ユアンの手が、ミリエルの頬をそっと撫でる。案じるようなまなざしに、ミリエルは微笑んで返した。
「大丈夫よ、ユアン。なぜかしら、セレナたちのことを、もう、恐ろしいと感じていないの」
「……そっか」
 ほっとしたようにユアンが目を細める。
 けれど、ミリエルの言葉に、弾かれたようにセレナが顔を上げた。
「なん、ですって……!? ば、ば、ばかにして……!」
 セレナの体が発光する。突然の魔力の放出に跳ね飛ばされた護衛兵たちが目を押さえ、悲鳴をあげて転がる。
 ゆらり、と立ちあがったセレナがぎ、とミリエルをにらみつける。
 掲げられた手の中には、白い光の塊が燃えるようにゆらゆら揺れていた。
「このバグ女! あんたがいるからゲームがうまく進まなかったのよ! あんたさえいなければ邪竜だってあたしのものになったのに……!」
 セレナの絶叫に振り返ったミリエルに、白い珠が向かってくる。思い切り投げられたそれの動きは速く、ミリエルの動きでは避けられそうになかった。
 びゅう、と風の音がする。直撃する──ミリエルが目を閉じるのと同時に、身体をふわりとあたたかなものが包み込んだ。
「大丈夫だよ、ミリー」
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