邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
「行こう、ミリー。僕の、最愛の聖女」
「わたし、なの、ユアン」
 愛している、と言われた。その愛を疑わなかった。けれど、ミリエルが聖女の生まれ変わり、だなんて知らなかった。でも、それなら、ユアンがミリエルを愛してくれたのは、ミリエルが聖女の生まれ変わりだから、だというのだろうか。
 狼狽するミリエルに気付いたのだろう。ユアンは「ごめん、誤解させたね」と眉を下げた。
「僕がミリーを愛しているのは、ミリーだからだ。君が聖女の生まれ変わりでなくたって、ミリー、君に恋をしたよ」
 ユアンがちゅ、と泣きそうな目元に口づける。くすぐったい。
 ミリエルは震える声で返した。
「わたし、でいいの」
「君じゃないとだめだ」
 その、まっすぐなまなざしが、どうしようもなく嬉しい。胸がとくん、と高鳴る。
 一瞬、残していくものが頭を過る。
 セレナ、両親、国の人々……。
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