邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
「ああ……」
 ユアンが、胸の内の空気をすべて吐き出すように、深い息を吐きだした。
 安心したように、ミリエルが応えたことが嬉しい、というように。
「ありがとう……、ミリー」
 ユアンが竜に姿を変え、空高く舞い上がる。ミリエルをあたたかな胸に抱きしめたまま。
 ぐんぐん小さくなるアトルリエ聖竜国の人々、王太子たちが、絶望的な顔をしている。
 けれど、それにもう何も思うことはなかった。赤子のように、不思議そうな顔でミリエルを見上げる、セレナにも。
 さよなら、わたしの生まれた場所。
 ……さよなら、ここにいた、悲しかったわたし。
 突き抜けるような青空が広がっている。ユアンと一緒に飛ぶ空は、どこまでも、どこまでも美しかった。

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