邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
「わたしは、この世界でだけに生まれ変われるように、そういう輪廻の輪に入るよ」
 そう言って、聖女の魂はまた笑った。
 けれど、それは聖女とはいえ難しいことだったのだろう。
 元々あった運命を捻じ曲げて、長い時間をかけて、ようやっと元と同じ国に生まれ落ちた聖女は、異世界からやって来た高慢な魂のせいで苦しめられていた。
 自分が、聖女が生まれるために国に与えた加護すら利用して、聖女の生まれ変わりは虐げられていた。
 ──かわいそうに。
 それが、その光景を見て、自分の抱いた感情だった。
 人間の姿をとって彼女のもとに降り立ったのは、彼女がもうこれ以上今世で苦しむことがないよう、再び輪廻の輪に戻してやろうという憐みのためだった。
 教会の隅、粗末な花壇のそばは、虐げられていた少女が愛する場所だ。
 今世では花が好きなのか、そこまで考えて、自分は「聖女」がかつて何を好んでいたか知らなかったことに気付いた。あんなにずっと一緒にいたのに。
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