邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
 あまりに美しくて、妖精か何かのようだと思った。
「ええ。あなたも見た通り、今代の聖女様……わたしの妹なんだけど、彼女は素行がよくないでしょ。でも、それは全部わたしのしたことになるの。聖女の名を汚さないために」
「そんなの、あの女が行動を改めればいいだけの話じゃないか」
「こら、あの女、なんて言ってはダメよ。誰かが聞いていたら、聖女様への不敬だって、あなたが罰せられてしまう。……たしかに、わたしも、そう思うわ。でもね、だめなの。父も母も、偉い人もみんな、あの子の嘘を信じるから。……うん、綺麗になったわ」
 すっかり泥が拭われたようだ。大事にしていただろうに、少女のハンカチーフはぐちゃぐちゃに汚れてしまっていた。
 すまない、と、そう口にしようとしたところで、聖女の生まれ変わりが驚いたように目を瞬いて言った。
「まあ、あなた」
「……?」
「あなた、とてもきれいな目をしているのね。あたたかい、暖炉の中の炎みたい」
「──……」
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