邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
邪竜だった自分の目は、血の色だと言われていた。
炎に例えて、しかもあたたかいと言ったのは、自分を浄化した聖女と、目の前の少女くらいだった。
驚いて固まった自分に、聖女の生まれ変わりは微笑んだ。
「急にごめんなさい。わたしはミリエル。ミリエル・クリスト・フララット。この教会の下働きをしているの。あなたは?」
「自分……僕、は」
少し考えて、かつての聖女が自分を呼ぶためにつけた名前を思い出した。竜、じゃつまらないでしょ、と言った表情を覚えている。それは、えくぼの浮いたこの少女──ミリエルのものとよく似ていた。
「僕は、ユアン。ユアン・ミーシャ」
「あら。セカンドネーム。あなたは貴族なの?」
「どちらも名前だ。候補を絞れないと言われた」
「名前が二つ? 洗礼名みたいなものかしら。教えてくれてありがとう」
聖女の生まれ変わり──ミリエルは、ユアンと名乗った自分の手をそっと両手で包んで、祈って言った。