邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
「ユアン、あたたかな炎の瞳のあなたに、神竜様と初代聖女様のご加護がありますように」
そう言って、ミリエルは顔を上げてにっこりと笑った。
晴れ渡る空のような青色の目がユアンを映して、その桜色の唇がユアンを呼んだ。
心臓が跳ねる。なんだこれは、と思った。
苦しく、甘い。不思議な感覚。頽れそうになるのに、目の前の華奢な体を抱きしめたいという欲求が胸の内をぐるぐると渦巻いている。
吐きだすように息をして、ユアンはそうか、と思った。
かつてユアンが聖女に抱いていたものは、友情だったし、憐みだった。助けられたという感謝もあった。
けれど、今胸にある感情は、そのどれとも違う。
(これが、愛情、か)
知らなかった感情に思い至って名付ける。しっくりときたその名前を疑うことはなかったが、実のところ、それは少し違った。
後になって自覚したことだが、ユアンはこの時、恋に落ちていたのだ。邪竜へと堕ちた時とは違う、あたたかな、狂おしい感覚。落ちるというより、溺れる、という方が近いな、とユアンは思った。
「それじゃあ、さよなら」
立ちあがってユアンに背を向けたミリエルを、ユアンはずっと目で追いかけた。見えなくなっても、その方向を見続けた。
そう言って、ミリエルは顔を上げてにっこりと笑った。
晴れ渡る空のような青色の目がユアンを映して、その桜色の唇がユアンを呼んだ。
心臓が跳ねる。なんだこれは、と思った。
苦しく、甘い。不思議な感覚。頽れそうになるのに、目の前の華奢な体を抱きしめたいという欲求が胸の内をぐるぐると渦巻いている。
吐きだすように息をして、ユアンはそうか、と思った。
かつてユアンが聖女に抱いていたものは、友情だったし、憐みだった。助けられたという感謝もあった。
けれど、今胸にある感情は、そのどれとも違う。
(これが、愛情、か)
知らなかった感情に思い至って名付ける。しっくりときたその名前を疑うことはなかったが、実のところ、それは少し違った。
後になって自覚したことだが、ユアンはこの時、恋に落ちていたのだ。邪竜へと堕ちた時とは違う、あたたかな、狂おしい感覚。落ちるというより、溺れる、という方が近いな、とユアンは思った。
「それじゃあ、さよなら」
立ちあがってユアンに背を向けたミリエルを、ユアンはずっと目で追いかけた。見えなくなっても、その方向を見続けた。