邪竜の鍾愛~聖女の悪姉は竜の騎士に娶られる~
何にも見えない中で、ユアンの視線だけをはっきりと感じた。
「それ、は」
「そんなのは嫌だ。君をやっとこの手に抱けたのに、君が砂漠の砂のようにすり抜けてどこかへ行ってしまうなんて耐えられない」
「……だって、あなたは、セレナと、婚約を……」
言い訳のように呟いた言葉は、ユアンの抱きしめる腕の力が強くなったことで返事とされた。ミリエルを離すまいとかき抱くユアンの手に、他に向ける想いなど感じられなかった。
「そんなのとっくに断った。僕が愛しているのは君だけだから。ミリー」
ほろほろと、目のふちから盛り上がった涙がいくつぶも零れていく。
ミリエルが泣き続けているのを知らないはずはないだろうに、ユアンはミリエルを腕の中から解放することはしなかった。
「愛しているんだ、ミリー、君だけを……」
「……でも、あなたもいつか、わたしから離れていくわ。わたしは『聖女のはきだめ』だもの」
はきだめとは、いつも聖女セレナが豪遊をしたとか、男遊びをしたとかの不始末の罪を擦り付けられ、身代わりになるミリエルをさしてセレナが言った言葉だ。
その言葉は今もミリエルの胸に突き刺さって消えない。仲良くなった人々は、みなその罪を信じて離れて行った。
だから愛されることが怖いのではない。手に入れた後、失うのが怖いのだ。
手に入らないと思っていた。それが急に手の中にはい、どうぞと入ってきた。けれど、こうしていながら背を向けられれば、それは何よりもさみしい、悲しいことだ。
「ミリーにそう思わせたのは、あの女だね」
「それ、は」
「そんなのは嫌だ。君をやっとこの手に抱けたのに、君が砂漠の砂のようにすり抜けてどこかへ行ってしまうなんて耐えられない」
「……だって、あなたは、セレナと、婚約を……」
言い訳のように呟いた言葉は、ユアンの抱きしめる腕の力が強くなったことで返事とされた。ミリエルを離すまいとかき抱くユアンの手に、他に向ける想いなど感じられなかった。
「そんなのとっくに断った。僕が愛しているのは君だけだから。ミリー」
ほろほろと、目のふちから盛り上がった涙がいくつぶも零れていく。
ミリエルが泣き続けているのを知らないはずはないだろうに、ユアンはミリエルを腕の中から解放することはしなかった。
「愛しているんだ、ミリー、君だけを……」
「……でも、あなたもいつか、わたしから離れていくわ。わたしは『聖女のはきだめ』だもの」
はきだめとは、いつも聖女セレナが豪遊をしたとか、男遊びをしたとかの不始末の罪を擦り付けられ、身代わりになるミリエルをさしてセレナが言った言葉だ。
その言葉は今もミリエルの胸に突き刺さって消えない。仲良くなった人々は、みなその罪を信じて離れて行った。
だから愛されることが怖いのではない。手に入れた後、失うのが怖いのだ。
手に入らないと思っていた。それが急に手の中にはい、どうぞと入ってきた。けれど、こうしていながら背を向けられれば、それは何よりもさみしい、悲しいことだ。
「ミリーにそう思わせたのは、あの女だね」