先輩の心、私でも晴らせますか…?
人気の裏
久しぶりに…雨が、降っている。
天気予報によると、梅雨の中休みは終わったみたい。
振り続ける雨…。
私は放課後、また用事の無い教室棟に足を運んだ。
「……」
3年の教室前。
今日は、向井先輩が…居た。
無言で、遠くから眺める。
しばらくして視線に気付いた向井先輩は、そっと顔をこちらに向け、いつもとは違う…無理して作ったような笑顔を浮かべた。
「美久ちゃん、本当に来てくれた」
「……」
無言のまま、ゆっくりと先輩の方に向かって歩く。
その途中で…素朴な疑問を零した。
「先輩は…何で雨になると、ここにいるのですか」
部活に生徒会に…忙しいはずの向井先輩。
なのに、雨の日だけ…ここで何をしているのだろう…。
私の言葉を聞いた先輩は、全く体勢を変えずに口を開いた。
「…雨が降ると、何もかもが、嫌になるんだ…」
「何もかも…?」
「……うん、何もかも」
今度は窓に背を向け、先輩は壁にもたれかかる。
そして少し首を傾げながら…私に一言。
「美久ちゃんさ、少しだけ俺の愚痴…聞いてくれる?」
愚痴…。
何故私が…。
そんなこと思う前に。
体は勝手に、小さく頷いた。