真夜中プラトニック
 ……眩しい。陽の光が、閉じたまぶたに当たっている。

 小さく唸りながら俺は薄目を開けて、それから一気に覚醒した。

 ベッドに横になった自分の腕の中に、陽咲がいる。彼女は未だ眠っているようで、すうすうとかわいらしい寝息が聞こえた。


「…………」


 そっと、少しだけ身を引いて、確認する。俺も、陽咲も、掛け布団の下はなにも着ていない。裸、である。

 とたん、怒涛のように昨夜の記憶が脳内によみがえり、俺は両手で顔を覆いたくなった。陽咲に腕枕をしていたので、それは叶わなかったが。

 俺は大切なコに、なんという、無体を……。


「ん……」


 小さく声をあげながら、とろりと陽咲のまぶたが開く。
 息をのんで硬直していた俺と目が合うなり、ぼんやりとしたその顔がふわりとほころんだ。


「……おはようございます、朔夜さん」


 そのままこてんと再び寝入りそうになった彼女を、慌てて止める。


「待った陽咲、待ってくれ、その、これは――」


 半身を起こし、言うべきセリフを思いつけないまま、俺は絶望していた。

 とうとう、手を出してしまった。ずっと大切で、守りたくて、幸せになって欲しいと願っていた彼女に。

 俺には、彼女に触れる資格なんてないのに。
< 102 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop