真夜中プラトニック
「朔夜さん……?」


 陽咲も、そっと身体を起こす。布団で前を隠しているものの、それでも白い肌のあちこちに昨夜の自分が執拗につけた赤い鬱血痕やかぶりついた痕跡が見え隠れして、血の気が引く思いだった。

 なにも言えず視線を落として押し黙った俺の耳に、小さなつぶやきが届く。


「後悔、してますか……?」
「ッ、」


 あまりにも消え入りそうな声音だったから、ハッとして顔を上げた。

 陽咲の、うるんだ瞳とかち合う。勢いのまま口を開こうとして、けれども踏みとどまって、しかし結局観念し、吐き出した。


「して、ない。……本当はずっと俺は、陽咲に触れたくてたまらなかったから」


 彼女が、驚きに目を丸くし言葉を失っている。

 それを認識しながら、続けた。


「でも、俺が陽咲を好きなのは、許されないから……っ」


 くしゃりと、自分の前髪を掴む。

 そうして俺は、今までずっと言えずにいた秘密を吐き出した。


「陽葵が死んだのは、俺のせいだ」
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