真夜中プラトニック
 その後、朔夜さんとこれから一緒に暮らすにあたっての決まりを話し合った。

 まず、家事全般は私が担当。これまではハウスキーパーさんに来てもらっていたらしいし今後も頼むつもりでいたようだけれど、居候の身で一日中家にいる私が少しでも役に立ちたいと、絶対譲らなかった。

 それに、もともと家事は嫌いじゃないのだ。お兄ちゃんとも分担してやっていたし、料理に至ってはお兄ちゃんの腕が壊滅的だったため全面的に私の担当だった。

 あとは、平日は昼頃に一度、メッセージアプリで何かしらのメッセージを送ること。
 朔夜さんは、とにかく私が無事でいるかを確認したいらしい。こんなに心配性な人だったんだ……と思ったし、ここまで心配させてしまっていることがやはり申し訳ない。

 ちなみに、家賃や光熱費を払うという申し出もキッパリ断られてしまった。
 この同居は自分から持ちかけたことだから、の一点張りである。朔夜さんの態度があまりにも頑ななので、仕方ないからなにか他のことで恩返しできないか考えておかなければ。


「とりあえず、一緒に生活する中でなにか気になることがあれば遠慮せず言っていこう。我慢が続けば、いつか関係が破綻してしまうだろうから」
「はい、わかりました」


 コクリとうなずいた私に、朔夜さんがやわらかく表情を緩める。

 そんな彼を見て改めて『かっこいいなあ』なんて思ってしまう私は、己のゲンキンさに軽く自己嫌悪だ。

 今日が土曜日で休日だからか、朔夜さんが仕事の日はいつもうしろに流してセットしている髪を下ろしていて、服装もスーツではなくVネックのニットにジーンズというラフな格好。
 そんなシンプルな服でもまるでモデルみたいに様になっているんだから、顔がいいというのは本当に最強である。


「少し早いけど、今日の夕食は外で食べようか。陽咲はなにが食べたい?」
「あ、はい、えぇっと……」


 立ち上がった朔夜さんにならい、私もソファから立つ。

 ……優しいこのひとに、幻滅されるようなことはしたくないなあ。
 そう強く思いながら、私は彼の後を追ってリビングを出た。
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