真夜中プラトニック
「はぁ……おなかいっぱいで幸せです……」


 二時間後。帰宅してソファに背中を深く預けながら至福のため息をこぼした私に、朔夜さんが破顔する。


「良かった。美味かったな、あの店」
「はい! エビチリも天津飯も食後の杏仁豆腐も……最高でした……」


 私たちが夕食を摂ったのは、近くにあった中華料理屋だ。
 徒歩で行ける距離だけれど朔夜さんは訪れたことがなかったようで、せっかくだからとそこに決めた。

 うっとりと答えた私を眺めながら、朔夜さんはなんだか妙にうれしそう。
 疑問を素直に尋ねてみたら、栄養失調になるほど食事を疎かにしていた私がちゃんと食べている姿を見られて安心したそうだ。


「その節は本当にご迷惑とご心配を……」
「またそういうことを。俺が勝手によろこんでるだけなんだ」


 でも、と釘を刺される。


「無理はするなよ。食べる量も、少しずつ戻していけばいい。まだ本調子じゃないだろ?」
「う……」


 たしかに、以前までの私は女性にしては食べる方だったと思う。今は、少食な人程度しか食べられないけれど。

 そう、朔夜さんには、山盛りの唐揚げや大盛りラーメンをペロリと平らげる私を知られているのだ。
 今さらなことなのに、改めて言われると恥ずかしくなってしまう。
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