真夜中プラトニック
「大丈夫か? 会社で倒れたと聞いた」
「え……どうしてそれを」
普段無表情が多い朔夜さんがどこか切羽詰まった表情で尋ねてきたことに、私は目を丸くした。
改めて見れば、いつも隙なく身だしなみを整えている彼には珍しく、その艶のある黒髪も若干乱れている。
すると、私たちのやり取りをそばで見ていた歌子さんが声をあげた。
「もしかして、秋月朔夜さんかしら? 連絡したのは私よ。陽咲ちゃんから提出してもらってる緊急連絡先に、この方の電話番号があったから」
「あ……」
彼女の言葉に思いあたる。
そうだ……お兄ちゃんが亡くなったとき、他に頼れる身内がいない私を気遣って、朔夜さんが自分の連絡先を会社に伝えておくように申し出てくれたんだ。
まさか、こんなに早くそれが使われる事態になるとは……私は情けない思いでいっぱいで、ベッドの上から気まずく朔夜さんをうかがった。
彼は背筋を伸ばして、歌子さんへと向き直る。
「では、あなたが泉さんですね。このたびはご連絡ありがとうございます。俺は陽咲の……知人の、秋月と申します。はじめまして、陽咲がいつもお世話になっています」
「いえいえ、ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、陽咲ちゃんにはいつもお世話になってるのよ」
会社に緊急連絡先の変更を申し出た際に、朔夜さんとの少し特殊な関係性は一応説明してあった。
そのためか、彼が一瞬言い淀んでも歌子さんから特に追及はされない。
歌子さんは、いつもの明るい笑顔を朔夜さんにも向ける。
「え……どうしてそれを」
普段無表情が多い朔夜さんがどこか切羽詰まった表情で尋ねてきたことに、私は目を丸くした。
改めて見れば、いつも隙なく身だしなみを整えている彼には珍しく、その艶のある黒髪も若干乱れている。
すると、私たちのやり取りをそばで見ていた歌子さんが声をあげた。
「もしかして、秋月朔夜さんかしら? 連絡したのは私よ。陽咲ちゃんから提出してもらってる緊急連絡先に、この方の電話番号があったから」
「あ……」
彼女の言葉に思いあたる。
そうだ……お兄ちゃんが亡くなったとき、他に頼れる身内がいない私を気遣って、朔夜さんが自分の連絡先を会社に伝えておくように申し出てくれたんだ。
まさか、こんなに早くそれが使われる事態になるとは……私は情けない思いでいっぱいで、ベッドの上から気まずく朔夜さんをうかがった。
彼は背筋を伸ばして、歌子さんへと向き直る。
「では、あなたが泉さんですね。このたびはご連絡ありがとうございます。俺は陽咲の……知人の、秋月と申します。はじめまして、陽咲がいつもお世話になっています」
「いえいえ、ご丁寧にありがとうございます。こちらこそ、陽咲ちゃんにはいつもお世話になってるのよ」
会社に緊急連絡先の変更を申し出た際に、朔夜さんとの少し特殊な関係性は一応説明してあった。
そのためか、彼が一瞬言い淀んでも歌子さんから特に追及はされない。
歌子さんは、いつもの明るい笑顔を朔夜さんにも向ける。