真夜中プラトニック
「専務が陽咲さんに善意でしたことであなたを必要以上に恐縮させてしまうのは、専務にとっても本意ではないと思います。ただ『ありがとう』と礼を伝えて逃げずにいてくれれば、それだけで専務は報われると思いますよ」
「……逃げずに……?」
「そう。逃げずに」
なんとなく文脈がおかしい気がして私は疑問符を浮かべるけど、田宮さんはニッコリ笑顔でうなずくのみだ。
そこで気を取り直すように、田宮さんがぱんと両手を合わせた。
「ともあれ、陽咲さんが元気そうで何よりです。入院されたと聞いたときは僕も驚きましたから」
きっとあえて明るい調子で言ってくれているとわかるその言葉に、私も苦笑で答えた。
「その節はご心配をおかけしまして……引っ越しのときも、いろいろと手助けいただいたようでありがとうございます」
「いえいえ、思慮不足な専務に少しアドバイスをした程度ですよ」
にこやかな田宮さんのセリフで、私は首をかしげる。
……『思慮不足』?
「えっと、朔夜さんはすごく周りに気を遣うタイプの人ですよね……?」
「あなたの前だとそうなんでしょうねぇ」
なんだか訳知り顔で田宮さんは言って、紅茶の入ったカップに口をつける。
私が脳内でさらにクエスチョンマークを浮かべていると、着替えを終えた朔夜さんがリビングへと戻ってきた。
その姿を見た瞬間、わ、と思わず声をあげてしまいそうになったのをなんとかのみ込む。
「……逃げずに……?」
「そう。逃げずに」
なんとなく文脈がおかしい気がして私は疑問符を浮かべるけど、田宮さんはニッコリ笑顔でうなずくのみだ。
そこで気を取り直すように、田宮さんがぱんと両手を合わせた。
「ともあれ、陽咲さんが元気そうで何よりです。入院されたと聞いたときは僕も驚きましたから」
きっとあえて明るい調子で言ってくれているとわかるその言葉に、私も苦笑で答えた。
「その節はご心配をおかけしまして……引っ越しのときも、いろいろと手助けいただいたようでありがとうございます」
「いえいえ、思慮不足な専務に少しアドバイスをした程度ですよ」
にこやかな田宮さんのセリフで、私は首をかしげる。
……『思慮不足』?
「えっと、朔夜さんはすごく周りに気を遣うタイプの人ですよね……?」
「あなたの前だとそうなんでしょうねぇ」
なんだか訳知り顔で田宮さんは言って、紅茶の入ったカップに口をつける。
私が脳内でさらにクエスチョンマークを浮かべていると、着替えを終えた朔夜さんがリビングへと戻ってきた。
その姿を見た瞬間、わ、と思わず声をあげてしまいそうになったのをなんとかのみ込む。