真夜中プラトニック
 ああ、私は。

 もう、こんなにも、朔夜さんが好きなんだ。また、恋をしてしまったんだ。

 誰にもとられたくないと思う。彼に、好きなひとや恋人がいないで欲しいと思う。

 なんて、わがままなんだろう。わかっているのに抑えきれない。自分だけが、朔夜さんを独占したいと思ってしまう。

 彼は私を、“親友の妹”としか見ていないと知っているのに。そこに恋愛感情はなく、境遇に同情して面倒をみてくれているだけだと、理解しているのに。

 かっこよくて大人で、そして大企業の御曹司である朔夜さんに、平凡な私は釣り合わないのに。


「ごめん、待たせた」


 ドアを開けて顔を見せた彼にハッとして、私は笑みを浮かべた。


「いいえ。……お仕事の電話ですか?」


 ドクドクとうるさく早鐘を打つ心臓のあたりに手を添えながら、さりげなさを装って尋ねる。

 運転席に乗り込んだ朔夜さんが、わずかに逡巡した後うなずいた。


「……ああ」


 言葉少なに肯定した彼を見て、私はそれが嘘だと察してしまった。

 けれどそれを、追及なんてしない。


「そうなんですね。お疲れさまです」


 物わかりのいいフリをして。ただ、彼を労るフリをして。

 泣き出しそうな衝動を堪えながら、笑顔を作った。
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