真夜中プラトニック
「彼にとっての“一番”は、あなたであるべきだから。お兄ちゃんに彼女ができたってわかったら、陽咲ちゃん、いろいろ遠慮しちゃうんじゃない?」
「それは……」


 それは、当たり前にそうなると思うけど……。

 私の表情を見て、藤嶋さんは『やっぱりね』というような苦笑だ。


「陽葵くんは、そんなあなたの性格をよくわかっていたのね。それに陽葵くん自身『妹を一番に優先したいから』って、あなたとふたりきりになってからは、ずっと恋人を作ろうとしなかった。『妹が信頼できるパートナーを見つけるまでは、自分の恋愛は考えられない』って……私は高校生のときからずっと彼にアタックしてたし、陽葵くんは人気者だったから私以外からも告白されたりしていたんだけどね」


 知らなかった……私、お兄ちゃんはモテない人だと思っていたのに。

 そこで朔夜さんが、じっと私を見つめながら言う。


「陽咲。陽葵が誰とも付き合わなかったのは陽葵が勝手にそう決めたことだから、陽咲が責任感じたりする必要はないからな。アイツがただ、重度のシスコンだっただけだ」
「あ、うん、そうよ。私も昔から陽葵くんに、いかに自分の妹がかわいくて大切かよく聞かされていたから」


 お兄ちゃん……何を話してるの……。

 今さら知る事実に、思わず顔が赤くなる。

 改めて、本当に……お兄ちゃんは、私のことを何より大切にしてくれていたんだな。
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