真夜中プラトニック
ぎゅう、と、掴まれた手に力がこもる。
こちらを見下ろす朔夜さんの顔は、照明を背にして逆光になっているからひどく暗く見えた。
「いない存在に、気を遣ってどうする。陽咲が出て行く必要はないし、……ずっと、ここにいればいい」
呆然とする私に、朔夜さんはささやくように、低く掠れた声で、続ける。
「……恋人なんて、作らない。俺が今、一番大切にしたいのは、陽咲だ」
顔が、熱い。
胸が苦しくて、呼吸が浅くなった。
彼の言葉は、愛の告白なんかじゃない。
ただ、私を安心させるために言ってくれているだけ。不安定な状態の、妹のような存在を放っておけなくて、情けをかけているだけ。
わかっているのに──どうしようもなくうれしくなってしまう浅ましい気持ちを、止められない。
「……ッ、」
ほんの少し、欲を出した。
お兄ちゃんに、甘えるように……朔夜さんの胸に、そっと、額をつけた。
頭上で、彼が息をのむ気配がする。
「……ありがとう、朔夜さん」
今だけ、と自分に言い聞かせながら、まぶたを閉じて彼の香りに酔いしれる。
「もう少しだけ……お世話に、なりますね」
「……ああ」
ポンと私の頭に軽く手をのせ、朔夜さんが応える。
優しいそのぬくもりを、一生、忘れたくないと思った。
こちらを見下ろす朔夜さんの顔は、照明を背にして逆光になっているからひどく暗く見えた。
「いない存在に、気を遣ってどうする。陽咲が出て行く必要はないし、……ずっと、ここにいればいい」
呆然とする私に、朔夜さんはささやくように、低く掠れた声で、続ける。
「……恋人なんて、作らない。俺が今、一番大切にしたいのは、陽咲だ」
顔が、熱い。
胸が苦しくて、呼吸が浅くなった。
彼の言葉は、愛の告白なんかじゃない。
ただ、私を安心させるために言ってくれているだけ。不安定な状態の、妹のような存在を放っておけなくて、情けをかけているだけ。
わかっているのに──どうしようもなくうれしくなってしまう浅ましい気持ちを、止められない。
「……ッ、」
ほんの少し、欲を出した。
お兄ちゃんに、甘えるように……朔夜さんの胸に、そっと、額をつけた。
頭上で、彼が息をのむ気配がする。
「……ありがとう、朔夜さん」
今だけ、と自分に言い聞かせながら、まぶたを閉じて彼の香りに酔いしれる。
「もう少しだけ……お世話に、なりますね」
「……ああ」
ポンと私の頭に軽く手をのせ、朔夜さんが応える。
優しいそのぬくもりを、一生、忘れたくないと思った。