真夜中プラトニック
「でも、つまり? そのサクヤさんって人に、陽咲は全然意識されてないってこと?」
「……うん」


 第三者の口から改めて聞かされた言葉が、グサリと心に刺さる。

 そう、だから、今日成美が遊びに誘ってくれたのはチャンスだと思っていて。


「成美……私のこと妹みたいなものとしか思ってない男の人に、女として見てもらうにはどうしたらいいと思う……?」


 恋人になりたい、だなんておこがましいことは、まだ言えない。

 だけどせめて、脱・妹ができたら……。

 成美の鶏肉のフォーとは味違いの、牛肉のフォーを箸でつつきながら、私は思いきって尋ねてみた。

 おそるおそる言葉を発した私の様子を目の当たりにした彼女は、なんだかいたく感動したような、それでいて芝居がかった仕草で口もとに手をあてる。


「やだ、陽咲がかわいいこと言ってる……! 恋バナしてる……! あの陽咲が……っ!」
「……あのさ、一応私過去にひとり彼氏いたことあるの、知ってるよね?」
「知ってるけどぉ。あのときは陽咲、全然キャッキャウフフしてなかったもの。すぐ別れたし」
「それは……たしかにそう……」


 キャッキャウフフはともかく、すぐに別れてしまったのは事実である。たしか、二ヶ月経ってないくらい……。

 そんな私の恋愛経験の薄さに比べ、愛され上手の甘え上手な成美は、私が知る高校時代からほとんど恋人が途切れたことのない百戦錬磨である。だからこそ、今日は成美に朔夜さんとのことを相談しようと思ったのだ。


「女として意識させたいなら、そりゃーアレしかないでしょ」
「アレって?」
「色仕掛け」


 思わずフォーを噴き出すところだった。むせてから、慌ててピーチティーを飲む。

 百戦錬磨の成美さん、アドバイスも上級者向けだった……。
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