真夜中プラトニック
「『女』をアピールしたいなら、男にはないモノ見せつけるのが手っ取り早いでしょ。今こそ陽咲のその隠れ巨乳が活躍するとき……!」
「待って、あの、そういうのはハードルが高いっていうか……」
「なに言ってんの。サクヤさんとの同居って、期間限定なんでしょ? 一緒に住んでる今ガンガン攻めなくていつ攻めるのよ」


 畳みかけられて、ぐうの音も出ない。

 たしかにこの同居は私が休職している間という期間限定のもので、しかも残りはすでに一ヶ月を切っている。……朔夜さんの口から、新しい私の住まいについての話はまだ出ていないけど。

 たぶん本当は、のんびりなんてしていられない。だって本来私たちは、今みたいに一緒に住んでいたりしない限り、なかなか会うことだってない関係なのだから。


「い、いろじかけって、具体的になにをすれば……」
「ソファとかで隣に座ったときいつもよりくっついてみるとか? お酒飲んで『酔っちゃった♡』って言ってしなだれかかるとか?」
「うぅ……」


 朔夜さんにそんなことをする自分が想像できなくて、変な呻き声が出てしまう。

 そこで成美が、名案とばかりにひらめいた顔をした。


「あ、ほら、去年の誕生日にあげた下着一式! アレ着て夜這いすればいいわ!」
「えっ……待って待って待って無理、そんな勇気ない! というかあ、あんなの、着れない……!」


 お店の中だからなんとか音量は抑えたけれど、私は真っ赤になって声をあげる。

 去年の私の誕生日、成美はそれはそれはえっちな見た目のランジェリーセットをくれた。

 いや、たしかにすごくかわいい。繊細なデザインのレースも刺繍も、胸がときめいた。
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