真夜中プラトニック
 でも、ショーツがTバックだったりとか……! スリップが透け透けだったりとか……!

 とにかく、私が着るにはハードルが高かったのだ。結果、その下着たちはもらってこのかたずっとチェストの中で眠っている。

 成美はライチティーをゴクゴク飲むと、呆れたようなジト目で私を見すえる。


「無理、じゃない! 意識させたいんでしょ? なら、使えそうなものはなんでも使って全力でがんばれ!」


 そこでふと、成美がテーブルの上にあった私の手をそっと掴んだ。


「私、陽咲に幸せになってもらいたいの。絶対絶対幸せになってもらいたいの。だから、がんばれ。もしフラれても私が慰めるからね」
「成美……」


 思いのほか真剣な表情と口調で彼女が言うから、不意打ちでじーんときた。後半のセリフは、ものすごく縁起が悪いけど。

 でも、大切な親友からの励ましに、私の心はたしかに勇気づけられる。

 まだ覚悟は決めきれていない。でもその迷いを振り切るように、私はコクリとうなずいてみせた。


「……私、がんばってみる」
「その意気! よし、気合い入れるためにいっぱい食べよ! アサリの酒蒸しも注文しよ!」
「ふは、うん、食べよう!」


 それは成美が食べたいだけでは、とは思ったけれど、つい笑ってから同意する。

 甘え上手で愛され上手な友人にあやかって、私の恋も、少しは先に進めるだろうか。

 ひとまず今は、美味しい食事と久しぶりに会った友人との会話を楽しもう。そう考えながら、私は止めていた箸をまた動かした。
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