真夜中プラトニック
 あなたになら……襲われても、構わないから。相手が、あなただから。
 だから私は、こんな恥ずかしいことをしてしまったんだよ。

 思っても、声にならない。言えない。

 朔夜さんの、その内に秘めた凶暴性を必死で抑え込んでいるような危うい瞳に、圧倒されて。


「陽咲は、他の男相手にもこういうことをするのか? そんな、かわいい顔をしてかわいい下着をつけて?」
「ち、ちが」


『かわいい』と言われたことに戸惑って混乱しながら、ぶんぶんと首を横に振る。勝手にじわりと涙も浮かんできて、今の自分は相当情けない顔をしているに違いない。

 ふと、朔夜さんが笑う。私を軽蔑しているようにも、何か自嘲しているようにも見える、冷たい笑み。


「ああ、完璧。男は大概単純だから、そういう顔をされるともっと泣かせたくなるんだよな」


 え、と言葉を発する前に、朔夜さんの左手がつつっと私の鎖骨のあたりを撫でる。

 思わず身体を震わせた私を見下ろして、彼が低くつぶやいた。


「……教えてあげようか。下心を持った男の前で油断すると、どんな目に遭うか」


 彼の指先が動いて、人差し指が胸の谷間に軽くもぐる。


「ひゃ、ぁ」
「陽咲。陽咲は、セックスの経験は? ある?」


 耳もとに唇を寄せてストレートに尋ねられ、カッと顔に熱が集まった。

 つい正直に、こく、と小さくうなずいた私を見て、朔夜さんが口の端を歪につり上げる。


「そう。なら──」 


 大きな手のひらが、スリップの下、私のおなかを滑る。
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