真夜中プラトニック
「多少ひどくしても、大丈夫だな?」


 ひゅ、と息をのんだ私の両手を片手で易々と掴み、落ちていたタオルを拾った朔夜さんがひとまとめにして結んだ。

 予想外のことに唖然とする私を昏い瞳で見つめながら、ルームウェアの前を広げられる。


「あ、」
「白いな。痕も、簡単につきそう」


 私の首筋から肩にかけてを撫でる朔夜さんが、ボソッと言う。

 そうして彼の顔が近づいてきたと思ったら、ガブリと肩に噛みつかれた。


「……あ"ッ、」


 血が滲むんじゃないかというくらい強く噛まれて、思わず腕を動かしたけれど拘束に阻まれる。

 どうして。私、なにを間違っちゃったんだろう。

 ただ、朔夜さんに“妹”じゃなく“女”として見て欲しかった。それだけだった。
 浅はかな私は、その先のことを、考えもしなかった。

 私は、知らず知らずのうちに彼の逆鱗に触れてしまったらしい。目の前にいる彼は、間違いなく怒っている。優しい朔夜さんを、自分勝手な私が怒らせた。自分の気持ちを押しつけるばかりで、彼の気持ちを蔑ろにしてしまったから。

 大好きな朔夜さんに触れてもらっているのに、今、とても悲しい。自分が情けなくて、恥ずかしい。

 肩紐を落としながら、朔夜さんが私の胸のふくらみの上にじゅっときつく吸いつく。
 
 浮き上がった赤い鬱血痕に軽く歯をたてて、それから朔夜さんは、私のズボンに手をかけようとした。
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