真夜中プラトニック
7.再会と酩酊

 朝。自室で服に着替える私は、ルームウェアを脱いで下着姿になったとき、ふと姿見に映った自分を見て動きを止めた。

 左肩と、そして右胸の上あたり。つい三日前に朔夜さんが残した痕跡に指先で触れて、小さく息をつく。

 すでに少し薄くなってきているそれらは、朔夜さんが、たしかに私に触れたという証で。あの夜のことを思い出すと顔が熱くなって、思わず奇声をあげながら頭を抱えたくなってしまう。

 あのとき、私が泣いたから、朔夜さんは止まってくれた。

 本当に優しいひとだ。そもそもああやって少し乱暴に私に触れたのも、私があまりにも男性への警戒心を怠っていたからで……。

 まああの晩に限って言えば、私はわざと隙を作って朔夜さんに迫ったわけだけど。
 だから本当は、あのまま手を出されていたとしても、それは願ったり叶ったりな展開だったのに……いつもの穏やかな朔夜さんとはまるで違う、本能を剥き出しにしたような様子の彼を目の当たりにして、『こわい』と思ってしまった。知らないひとみたいで、泣けてしまった。

 自分が望んだ状況だったはずなのに、なんて、勝手なんだろう。そのうえで、彼がつけた痕が日に日に薄くなっていくのを見て、寂しいなどと残念にも思ってしまっている。本当に、私は勝手だ。

 あれから気まずくて一緒に寝るお願いもできていないから、今朝も寝不足だ。
 昼寝ならできるのに、どうして、夜になると眠れなくなってしまうんだろう。
 ため息を吐いて、クローゼットから服を取り出す。
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