真夜中プラトニック
「……今日、陽咲はなにか予定は?」


 ダイニングテーブルで一緒に朝食を摂りながら、向かいに座る朔夜さんがどこか気遣わしげな態度で尋ねてきた。

 彼もあの夜のことがやはり気まずいらしく、ずっとこんな調子だ。私は努めて明るく答える。


「洗濯洗剤が切れそうなので、それを含めた買い出しに行ってきます。朔夜さんは、今日は遅くなりそうですか?」
「いや……あまり遅くはならないと思う。晩ごはんは、家で食べたい」
「了解です」


 ニコッと笑って、私は玉子焼きをひと切れ箸で取った。

 朔夜さんは味噌汁のお椀に口をつけて、「うまい」と表情を和らげている。

 ……これ以上は、望みすぎなのかな。

 好きなひとと、今は一緒に暮らせていて、こうして自分が作ったごはんを「美味しい」と言って食べてもらえる。それはきっとすごく贅沢なことで、たとえ妹のようなポジションだとしても、現状に満足するべきなのかもしれない。

 ……でも、私たちの関係は、すでに少し変わってしまった。

 朔夜さんを、困らせたいわけじゃない。私は……どうするのが、正しいんだろう。

 わからないまま、けれどこの想いをなかったことにはできなくて、胸が苦しかった。
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