真夜中プラトニック
 ……ちょっと、買いすぎちゃったかな。

 足もとの荷物入れにかろうじて納まっているボリュームの買い物袋をちらりと見て、反省する。

 洗濯洗剤の他にもあれこれ足りないものや気になったものを手に取って、結局なかなかの量の荷物になってしまった。ドラッグストア、いろんなものがあって楽しくて好きなんだよね……。

 今は、近くにあったカフェでひと休み中である。これからこの荷物を抱えてバスで帰らなければいけないので、体力回復は大事なのだ。

 窓際の日当たりのいいふたり用の席で、カフェラテをひと口すする。

 そうしてこんがりあたためてもらったチョコチップスコーンにあーんと口を開けてかぶりつこうとした瞬間、横を通りかかった人物に声をかけられた。


「春日?」


 聞き覚えのある声で、パッと顔をそちらに向ける。


「……坂倉(さかくら)くん?」


 目を丸くしてつぶやいた私に、記憶よりも少し大人びた顔つきの坂倉くんは、うれしそうに笑ってうなずいた。


「ごめん、ゆっくりしてるとこ邪魔して」
「ううん、驚いたけど会えてうれしい」


 空いていた目の前の席に腰をおろした坂倉くんが申し訳なさそうに言うから、こちらも笑みを浮かべて答える。


「元気だった? 今日は仕事休み?」
「うん。坂倉くんも?」


 兄のことや、休職中であることをわざわざ説明しようとも思えず、当たり障りのない返事で会話を続けた。
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