真夜中プラトニック
「そう。本屋行って喉渇いたからコーヒー飲みに来たら、春日がでっかい口開けてスコーンにかぶりつこうとしてたからつい声かけちゃった」
「もう、ひどい」
あはは、と彼はまた笑い、コーヒーカップに口をつける。
その人懐っこさに、変わらないな、と懐かしくなった。
坂倉くんは、専門学校で一緒だった同級生で──それから、たった二ヶ月間だけ私の彼氏だった人。
同じクラスになって、仲良くなって。周りの友達に、カップル扱いされることが多くなって。『じゃあ本当に付き合う?』と、なんとなく流れで付き合い初めて。けれど結局、『友達がいいね』と笑って友達に戻った、私の数少ない異性の友人。
「坂倉くんは、新築中心の大手の住宅メーカーだよね。どう?」
「わりとブラック。でもなんとかやってるよ」
「ブラックはだめだよ。身体壊す前に逃げて」
「でも給料はいいんだよなあ」
「だめだめ惑わされちゃ。それがあの人たちの手口なんだよ」
「あの人たちて」
あの頃も、こうして真面目なこともくだらないことも夢のことも、笑いながら話した。
恋ではなかったけれど、坂倉くんもまた、私の大切な人だった。たった一回きりとはいえ身体を重ねた間柄だからちょっぴりぎこちなくなったときがあったのも、今では笑える思い出だ。
「もう、ひどい」
あはは、と彼はまた笑い、コーヒーカップに口をつける。
その人懐っこさに、変わらないな、と懐かしくなった。
坂倉くんは、専門学校で一緒だった同級生で──それから、たった二ヶ月間だけ私の彼氏だった人。
同じクラスになって、仲良くなって。周りの友達に、カップル扱いされることが多くなって。『じゃあ本当に付き合う?』と、なんとなく流れで付き合い初めて。けれど結局、『友達がいいね』と笑って友達に戻った、私の数少ない異性の友人。
「坂倉くんは、新築中心の大手の住宅メーカーだよね。どう?」
「わりとブラック。でもなんとかやってるよ」
「ブラックはだめだよ。身体壊す前に逃げて」
「でも給料はいいんだよなあ」
「だめだめ惑わされちゃ。それがあの人たちの手口なんだよ」
「あの人たちて」
あの頃も、こうして真面目なこともくだらないことも夢のことも、笑いながら話した。
恋ではなかったけれど、坂倉くんもまた、私の大切な人だった。たった一回きりとはいえ身体を重ねた間柄だからちょっぴりぎこちなくなったときがあったのも、今では笑える思い出だ。