真夜中プラトニック
「はー、春日に話聞いてもらったら弊社のやばさ改めてわかったわ。辞めよ辞めよ」


 しばらく時間を忘れておしゃべりを楽しんだ後、軽い調子でそう言った坂倉くんに私は神妙な顔でうなずく。


「それがいいよ。まだ若いんだから、なんとでもなる」
「同い年のやつにそう言われるのうける。ていうか、春日の職場めちゃくちゃ働きやすそうでいいな。求人出してない?」
「あ、どうだろう。最近ひとり新しく入ったばかりで……一応聞いてみるね」
「ありがと。頼むわ」


 カフェを出てから、坂倉くんは私の重い買い物袋を持ってバス停まで送ってくれた。とてもありがたいし申し訳ない。


「坂倉くんありがとう。すごく助かりました」
「いえいえ。ひとりで持って帰るには買いすぎだと思うよ」
「私も買ってから気づいた……」


 何やらツボに入って爆笑している坂倉くんに、ゴソゴソと袋の中を漁って出したものを差し出す。


「これ、お礼にあげる。チョコ好きだったよね?」
「おー、わざわざありがとう」


 自分のおやつ用にと買ったマカダミアナッツチョコレートの箱を受け取った坂倉くんが、ニッと朗らかに笑う。


「また会おうぜ。今度は他の奴らも一緒に」
「うん。またね」
「またな」


 ちょうどやって来たバスに乗り込みながら、笑みを浮かべて手を振った。

 ドラッグストアで買いすぎたのは失敗だったけど……久しぶりの友人に会えて、いい日だったな。

 そんなことを考えながら、明るい気持ちで帰路についた。
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