真夜中プラトニック
「朔夜さん、まだかな……」


 自分以外は誰もいない広いリビングのソファで、ポツリとつぶやく。

 今朝の時点で朔夜さんは「帰りは遅くならないと思う」と言っていたけれど、夕方になって【田宮と飲むことになったから俺の分の晩ごはんは用意しなくていい】とスマホにメッセージが届いた。

 現在時刻は二十二時過ぎ。明日は土曜日だし、まだそこまで遅い時間ではないとはいえ、私はソワソワしてしまう。

 朔夜さん、お酒弱いらしいのに、大丈夫なのかな。田宮さんが一緒なんだから、心配いらないんだろうけど……。

 夕飯を食べお風呂も入って歯磨きも済ませ、もう後は寝るだけの状態でソファに座りながら、背もたれに深くもたれて息を吐く。

 手にしているスマホを操作して朔夜さんとのトーク画面を開いてみるも、数時間前に私が送った返信に既読がついているのは確認できて、それ以降新たなメッセージはない。

 先に休んでいた方が、いいかな。でももし、帰ってきた朔夜さんが泥酔して介抱が必要だったりしたら……そもそもお酒を飲んでいるのは田宮さんだけで、朔夜さんは飲んでいない可能性もあるけど……でも……。

 そんなことをぐるぐると考えていたら、不意に玄関の方から物音がしたからハッと顔を上げた。

 よく聞こえないけれど、男性の声。それからドアが解錠された音がして、慌てて玄関へと向かう。


「あ、陽咲さんこんばんは。良かったまだ起きてて」
「田宮さん……!」


 ぐったりとした朔夜さんを支えながら玄関に立っていた田宮さんのもとに、私は駆け寄る。
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